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オーストラリア1周25,000kmの旅【北部パート4】

9日目、トップエンド、カカドゥへ。
400kmの寄り道でアボリジーニの聖地を訪れてみることにしました。

東京都の6倍の面積を持つその聖地には、最古のもので2万年前の絵、X線画を岩の壁面に見ることができました。
自分達独自の表現方法は、時代を超えたメッセージを感じることができます。

現在はオーストラリア北部に多く住んでいるアボリジーニは先住民だったという証を強く刻んでいたわけです。
そのアボリジーニが多く住むこの地域には、アボリジーニのコミュニティが経営する宿泊施設があります。
ホテル全体に慎ましく誇示しているアボリジーニの文化は、何となく自分達の国における立場に置き換えているようにも思えます。
もっと前面に押し出せば良いのにと思うくらいです。
その夜ディナーの後、テリーの発案で明日の朝アンバングバング湿原へ行って、夜明けを見ながら朝食をとろうということになりました。
その湿原の動物達の初動の情景は素晴らしいというので。

翌朝4時に起床して、日の出が見られることを祈りつつホテルを出発。
ヒンヤリと肌寒く感じる朝、薄手のコートを着て野鳥ウォッチ小屋で眠い目をこすりながら無言で待機。
薄暗い世界の中から聞こえてくる鳥の囀り。
何かの動物が動き出すガサッという音。
徐々に徐々に東の空が明るくなっていき、輪郭が見え始めた湿原。
再び目を東の空に向けると、薄紫から少しずつ赤く変化していく雲。
その空間を遮って飛び立って行く水鳥たち。
その水面をゆっくりこちらに向かってくるワニ。
それに気付いたように水草から飛び立つカワセミの一種。
生きているという実感を抱かせてくれる湿原の1日の始まり。
森の向こうから顔を出して背伸びしている太陽、その顔は段々紅潮していき、周りまで赤く染め上げ、やがて見えるもの全てにエネルギーを吹きあてている。
それを受けたものはヤル気を起こし背伸びをする。
なんて美しい朝なんだろう!
絵には描けなくとも、目に焼き付ける。
なんて素晴らしい1日の始まりであろうか!
こんな贅沢な朝食をとっていいのかなぁと、テリーと同調してしまいました。
やはり、僕たちは運が良いのでしょうか?
そうですよね、いろいろな条件が合致しなければ、こんな朝は迎えられないんですから。
さすがにこの日は少し睡眠をとってから、僕等の好きな『滝』を見に行くことにしました。
ジムジムフォール、高さ200m、祭壇のような滝。
豪快に落ちてくる水は、見上げていると、怖さより神秘さを感じます。
やはりテリーは滝壷に向かって泳ぎ始めました。
水温は推測するに10℃以下、野生児テリーちゃん!
寒くないの?と訪ねると、うん、ちょっとだけだって。

11日目、相変わらずのブッシュファイヤーの中を走り、一路ダウインへおよそ400kmの旅。
今回は1号線を進むというより、北部の大自然の中を、『人とは何ぞや』なんていう哲学的疑問をぶつけながら走り回ったような気がしました。
勿論、答なんて出てはこないんですけどね。
まぁ、ひとつだけ感じたことといえば、自然が僕に『そんなに急いだ人生を送ってどうするの?』と問い掛けたことでしょうか・・・。

終わり
2002.06.14

『ダーウィンの旅』様、補足資料として画像使わせていただきました。ありがとうございました。

オーストラリア1周25,000kmの旅【北部パート3】

まず200kmの舗装道路を南下し、未舗装道路50kmを走らなければなりません。
なぜ、いまさら”未舗装道路”なんていう表現を使うのかといいますと、この道は今までとは随分違うのです。

英語でいうコルゲイション=悪路だったんです。
車の中で自分の体をコントロールできないほど揺れる道なんです。
でも、テリーはその道を楽しむかのように車を走らせます。
本当に上手い運転に、さすがの僕も下を巻いたほどでした。
なぜそこまで道が酷いのかというと、バングルバングルが発見されてからまだ年数が経っていない、つまり開発されていないから?
いや、それだけではありません。
その場所に必要以上の人を入れないということからなのです。
自然は自然でなければいけないんですね。
どこかの国も見習いたいものです。
だって、この辺りは10年程前に地元の人達にやっと知られたほど未知で貴重なエリアなんだそうです。


3億5千万年前の砂岩の断層が浸食、隆起を繰り返してできた渓谷。
しかも、指で擦れば零れ落ちる壁、その奥にできた巨大ホールの中の自然が作ったアート・ギャラリー、中にいると神経が休まる程の冷えた空気、まさに神の創りし創造物。
その名はカテドラルゴージ。
世界遺産に文句無く指定される究極の景観。
許されるなら数日寝起きしたい場所なんですが、せめて1日だけキャンプを張ることにしました。
でも、テントを設置する場所は、少し離れた指定のキャンプ場です。
しかもその日は乾燥度の比率が高いため、焚き火は禁止。
仕方なく持ち運んだプロパンでのクック、思惑の料理を皆に食べさせることはできませんでしたが、その分、周りの環境が補ってくれて楽しい食事をとることができました。
そしてテントでの就寝、何か蘇りし幼き頃の血の騒ぎ。
こんなことは何十年と忘れていたものでした。
蓄積されていたストレスが溶けていくのが感じられる時間でした。
アボリジーニの言葉を誤解して付けられた地名、バングルバングル。
神秘な場所から今日は、悪路を戻りながらオーストラリア最後の秘境、トップエンド、ノーザンテリトリーに向かいます。

その途中また、テリーのお勧めでクロコダイルファーム(ワニの牧場)に行くことになったんですが、元々ワニが嫌いな僕です、気持ちはとってもブルー、それも相手は凶暴な性格を持つソルトウォータークロコダイル。
その子供のワニが折り重なって寝ている姿、それも数百匹、まるでとぐろを巻いているヘビのようなんです。
早く退散したかったのですが、牧場主のブルイさんがランチを食べて行けというので頂くことになりました。
もうオチはわかると思いますが、出された食事はクロコダイルのステーキ、一瞬『ワーオー!』と奇声を発してしまいました。
でも好意を無にできないのが僕の性格でして、笑顔の下に苦しさを隠して一口。
『・・・・!?』
うまい!
鶏肉のようにさっぱりしていて美味いんです。
でも原型は極力想像しないようにして食べきりました。

食後、ペットを見せたいというので、広場まで付いて行くと、ブルイさんが特殊な口笛でそれを呼んでいます。
すると、かなり遠くから1頭の動物が走ってきます。
なんとそのペットとはバッファローの子供なんです。
子供といっても300kgくらいはゆうにあるんですが、それが犬のように飛び跳ねてブルイさんにじゃれついています。
そして、頭をブルイさんに押し付けて何かをねだっているんです。
ブルイさんが隠し持っているビールを出すと、口を突き出して飲み始めました。
その可愛さときたら笑いが止まりませんでした。
その次のペットは60歳のワニ、歳をとりすぎていて口を大きく開けると歯が一本もありません。
想像してみてください、歯無しのワニを。
これも可笑しくて可笑しくてオナカがよじれそうでした。
さらに可笑しなことに、気乗りしなかったクロコダイルファームに3時間いたら、またストレスが飛んで行くのがわかりました。

そんな感覚を楽しんでいると、このファームに滞在しているというアメリカ人が挨拶に来てくれました。
彼は、これからショートトリップで(といってもブルイさんの敷地にある川ですが)釣りをしながら3、4日キャンプをするとのことです。
その時、僕は彼に
『ここはいいところだね。日本にいるとたまらなくストレスが溜まるけど、ここに暫くいたら全て消え失せそうだよ。また訪れたいファームだね。』というと、
『そうさ、ここはそういう場所なんだよ、来たくなったらいつでも来ればいいさ。でもオレはこれが最後になるかもしれないから目一杯楽しんでるんだ。』と。
『最後って?』
『オレはずっとカンサーと闘っていてね、あと半年かな?』
『それじゃぁ、キャンプなんて無理しちゃダメじゃないか』
『大きなお世話さ!これもオレの人生だよ、最後まで一番好きな処にいたいんだ。もしまた会うことができたらここで会おう。じゃぁ、良い仕事と良い旅を、オーストラリアを楽しんでくれ!』
笑いながら出かけたそのアメリカ人のことは、頭から離れることはありません。
なぜなら、ブルイさんも彼のことはアメリカ人ということだけしか知らず、アメリカの何処に住んでいるかも知らないそうです。
さぁ、もっと楽しまなくては!

想像もできないような素晴らしい時間を経験できた後は、ダウインから340km南にあるキャサリン渓谷に向かうことにしました。
ここは4~10月の乾季にしか入ることのできません。
なぜなら、雨季には20mの壁も15~16mまで水位が上がるそうです。
最高の条件のこの渓谷をカヌーで下る様は、自分に見えなくてもはっきりと俯瞰で想像できるほど、のどかで清らか、清々しく気持ちのいいものでした。
それも素晴らしき友、テリーと歌を歌いながら。

・・・・・続く
2002.05.30

『AUSTRALIAN PHOTO GALLERY』、『AUSTRALIA’S OUTBACK』、『Farmオーストラリア大陸をいく』の各様、補足資料として画像使わせていただきました。ありがとうございました。

オーストラリア1周25,000kmの旅【北部パート2】

着いたところは、ミッチェルフォールズという200mの長さがあり、4段になっている滝でした。
乾季にもかかわらず、水量豊に流れ落ちる美しい滝。

これが雨季であったら、どんな光景が目の前に広がるのかと考えずにはいられませんでした。
車で走っている時には、この先に滝があるとは想像もできない平地に、突然地を割いたように出現するなんて、まさに映画のトリック。
是非見せたいといってくれた言葉に納得、単なる風景とはひと味もふた味も違って、目に焼き付いて離れません。
テリーにまたまた感謝!

こんなこともあったので、今日は少しナイト・ドライヴをしなければなりませんでした。
カランブルロードにある、テリーの友達の経営しているドライスデルステイションに向かいます。
暗い夜道といっても、真っ暗で少しアップダウンのある道を、車のライトだけで進むのは日本ではなかなか経験できないことでした。
それも1時間も2時間も限り無いかのごとく。
そんな状況下でもテリーはスムースに車を走らせてくれるんです。

安堵感からか、上の瞼と下の瞼がいつの間にかくっついてしまって気持ちよくなっていると、急に赤黄色の世界が瞼の向こうに覆い被さってきたんです。
目的地に到着かと思い何気なく目を開けると、何と車は火の中に向かって進んで行くではないですか!
わおー!山火事だ!
寝ているどころではありません。
どうしよう、テリー車を停めよう、これ以上進むのは危険だよ、戻って連絡しよう。
そんなことを伝えたと思います。
でもテリーは平然として車を走らせ、こちらを向いて笑いながら『ブッシュファイヤー、よくあることさ、大丈夫』と。
ああ、これがブッシュファイヤーなのかと、自分を落ち着かせるのに数分はかかってしまいました。
何故なら思っていたイメージとはあまりにもかけ離れていたからです。
丘が、いや、いくつもの丘が、目に見える丘がずーっと火事なんです。
それも、何も対処しないで自然にまかせて火が消えるのを待っているんです。
山手線の内側の数倍もの広さが燃えていると考えてみてください。
驚かない方が不思議です。
でも暫く見ていると恐怖感は薄れ、すばらしい夜景が心を癒してくれるのには自分でも驚きでした。

そんな交錯した感情、昂ぶりの時の中で今夜の宿に到着しました。
こんな場所に人がいるのか?そう思いつつ到着したので、ドライスデルステイションは温かさを感じさせるには十分なものでした。
何か、オアシスの中にあるドライブインモーテルといった雰囲気を漂わせています。
ハラペコの僕らを迎えてくれたのは、オーナーの家族が作ってくれた温かくハートフルなディナーでした。
久しぶりのご馳走に食の進むこと進こと、それに家族と一緒だったので会話も弾み、時の経つのも忘れる程でした。

翌日、目を覚まして部屋の前を見ると、そこに飛行機の滑走路があるのには驚かされました。
この辺りは、すでに陸の孤島なんだそうです。
1週間に1回、生活必需品が空輸されるのだそうです。
勿論、飛行機といっても小型機ですが。
昨日のブッシュファイヤーのことを話してみると、まだ燃えているんじゃないの?と、まるで関心の無い様子。
この辺りでは日常茶飯事だそうです。

4日で1,000km、オーストラリアにしては少ない移動距離で走ってきたわけですが、今までのような直線の道路が少ない為で、それに自然にできた川、フルッドロードを渡らなければならないこともあり、良い移動をしている方かもしれません。
温かい朝食をとり、コーヒーのおかわりを飲み、さぁ出発!
これから南緯16度にあるパヌルル国立公園の中にあるカナナラの町で食料の買出しをして、オーストラリア3大奇跡のひとつ、バングルバングルに向かって車を走らせます。

・・・・・続く
2002.05.30

『ダーウィンの旅』様、補足資料として画像使わせていただきました。ありがとうございました。