オーストラリア1周25,000kmの旅【北部パート3】

まず200kmの舗装道路を南下し、未舗装道路50kmを走らなければなりません。
なぜ、いまさら”未舗装道路”なんていう表現を使うのかといいますと、この道は今までとは随分違うのです。

英語でいうコルゲイション=悪路だったんです。
車の中で自分の体をコントロールできないほど揺れる道なんです。
でも、テリーはその道を楽しむかのように車を走らせます。
本当に上手い運転に、さすがの僕も下を巻いたほどでした。
なぜそこまで道が酷いのかというと、バングルバングルが発見されてからまだ年数が経っていない、つまり開発されていないから?
いや、それだけではありません。
その場所に必要以上の人を入れないということからなのです。
自然は自然でなければいけないんですね。
どこかの国も見習いたいものです。
だって、この辺りは10年程前に地元の人達にやっと知られたほど未知で貴重なエリアなんだそうです。


3億5千万年前の砂岩の断層が浸食、隆起を繰り返してできた渓谷。
しかも、指で擦れば零れ落ちる壁、その奥にできた巨大ホールの中の自然が作ったアート・ギャラリー、中にいると神経が休まる程の冷えた空気、まさに神の創りし創造物。
その名はカテドラルゴージ。
世界遺産に文句無く指定される究極の景観。
許されるなら数日寝起きしたい場所なんですが、せめて1日だけキャンプを張ることにしました。
でも、テントを設置する場所は、少し離れた指定のキャンプ場です。
しかもその日は乾燥度の比率が高いため、焚き火は禁止。
仕方なく持ち運んだプロパンでのクック、思惑の料理を皆に食べさせることはできませんでしたが、その分、周りの環境が補ってくれて楽しい食事をとることができました。
そしてテントでの就寝、何か蘇りし幼き頃の血の騒ぎ。
こんなことは何十年と忘れていたものでした。
蓄積されていたストレスが溶けていくのが感じられる時間でした。
アボリジーニの言葉を誤解して付けられた地名、バングルバングル。
神秘な場所から今日は、悪路を戻りながらオーストラリア最後の秘境、トップエンド、ノーザンテリトリーに向かいます。

その途中また、テリーのお勧めでクロコダイルファーム(ワニの牧場)に行くことになったんですが、元々ワニが嫌いな僕です、気持ちはとってもブルー、それも相手は凶暴な性格を持つソルトウォータークロコダイル。
その子供のワニが折り重なって寝ている姿、それも数百匹、まるでとぐろを巻いているヘビのようなんです。
早く退散したかったのですが、牧場主のブルイさんがランチを食べて行けというので頂くことになりました。
もうオチはわかると思いますが、出された食事はクロコダイルのステーキ、一瞬『ワーオー!』と奇声を発してしまいました。
でも好意を無にできないのが僕の性格でして、笑顔の下に苦しさを隠して一口。
『・・・・!?』
うまい!
鶏肉のようにさっぱりしていて美味いんです。
でも原型は極力想像しないようにして食べきりました。

食後、ペットを見せたいというので、広場まで付いて行くと、ブルイさんが特殊な口笛でそれを呼んでいます。
すると、かなり遠くから1頭の動物が走ってきます。
なんとそのペットとはバッファローの子供なんです。
子供といっても300kgくらいはゆうにあるんですが、それが犬のように飛び跳ねてブルイさんにじゃれついています。
そして、頭をブルイさんに押し付けて何かをねだっているんです。
ブルイさんが隠し持っているビールを出すと、口を突き出して飲み始めました。
その可愛さときたら笑いが止まりませんでした。
その次のペットは60歳のワニ、歳をとりすぎていて口を大きく開けると歯が一本もありません。
想像してみてください、歯無しのワニを。
これも可笑しくて可笑しくてオナカがよじれそうでした。
さらに可笑しなことに、気乗りしなかったクロコダイルファームに3時間いたら、またストレスが飛んで行くのがわかりました。

そんな感覚を楽しんでいると、このファームに滞在しているというアメリカ人が挨拶に来てくれました。
彼は、これからショートトリップで(といってもブルイさんの敷地にある川ですが)釣りをしながら3、4日キャンプをするとのことです。
その時、僕は彼に
『ここはいいところだね。日本にいるとたまらなくストレスが溜まるけど、ここに暫くいたら全て消え失せそうだよ。また訪れたいファームだね。』というと、
『そうさ、ここはそういう場所なんだよ、来たくなったらいつでも来ればいいさ。でもオレはこれが最後になるかもしれないから目一杯楽しんでるんだ。』と。
『最後って?』
『オレはずっとカンサーと闘っていてね、あと半年かな?』
『それじゃぁ、キャンプなんて無理しちゃダメじゃないか』
『大きなお世話さ!これもオレの人生だよ、最後まで一番好きな処にいたいんだ。もしまた会うことができたらここで会おう。じゃぁ、良い仕事と良い旅を、オーストラリアを楽しんでくれ!』
笑いながら出かけたそのアメリカ人のことは、頭から離れることはありません。
なぜなら、ブルイさんも彼のことはアメリカ人ということだけしか知らず、アメリカの何処に住んでいるかも知らないそうです。
さぁ、もっと楽しまなくては!

想像もできないような素晴らしい時間を経験できた後は、ダウインから340km南にあるキャサリン渓谷に向かうことにしました。
ここは4~10月の乾季にしか入ることのできません。
なぜなら、雨季には20mの壁も15~16mまで水位が上がるそうです。
最高の条件のこの渓谷をカヌーで下る様は、自分に見えなくてもはっきりと俯瞰で想像できるほど、のどかで清らか、清々しく気持ちのいいものでした。
それも素晴らしき友、テリーと歌を歌いながら。

・・・・・続く
2002.05.30

『AUSTRALIAN PHOTO GALLERY』、『AUSTRALIA’S OUTBACK』、『Farmオーストラリア大陸をいく』の各様、補足資料として画像使わせていただきました。ありがとうございました。

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